STRANGE EYES


.

- 第一話 -


「ねぇねぇ!!この世にさぁ、悪魔がいるって信じられる?」
「えぇーっ!?そんな事があるはずないじゃない!!」
「あんたはどう思う?侑稀…?」
「私は…」
 どこからそんな話になったのだろう?と思いながら、何と言うべきか考えた。


 ある休日の夜、私は教会に行った。
 その教会は、ステンドグラスがとても綺麗だった。月の光が差して、床に映し出されるのを見るのが好きだった。

 それを見て帰ろうと思った時、私は不思議な出会いをした。


 街外れの丘の教会に、その者はそこにいた。
 初めは全く気づかなかった…何か気配を感じて、目を凝らして見ると、そこに誰かがいるのが分かった。
「!!…そこにいるのは…誰!?」
 いつも、この時間には誰も見る事は無かった。
「……」
 だから、少し私は不安だった。…また、普通の人には見えないものが…と。
「君は、私の姿が…見えるのか?」
 低く落ち着いた声が、静かな教会の中に響く。私はその問いに恐る恐る頷いた。
「…面白い…珍しい人間もいるものだな…」
 妙に強調された言葉に、侑稀は疑問に思った。まるで、その者は自分が人間とは別のモノだという様に言っている…そんな風に聞こえた。
(…もしかして…!?)
「お前達は良く『悪魔』と私達を呼ぶな…」
「!?」
 私はその者の言った事に、不安を覚える。自分は何も言っていない。だが、まるで自分の疑問に答えるかの様な、その言葉に、思わず逃げ出した方が良いと思った。だが、足がすくんで動けなかった。
「それにしても…姿を見られたのは初めてだ。…自分から見せる事はあるが…」
「えっ…?」
「……」
 こちらに近づいてくるその者の顔が、月明かりに照らされて見えた。銀髪で、瞳の色は薄い紫だった。先刻まで不安で仕方なかったはずなのに、どうしてかその瞳を見て、そんな感情はどこかに消えてしまった。
 彼女を面白そうに見て、少し考えて言った。
「面白いついでに何か願いを聞いてやろう…名前は?」
 そう言われて、私は少し迷った。何故なら、悪魔は願いを聞く代わりに何か見返りを求めてくると、オカルト好きの友人の言葉を思い出したからだ。
「…見返りを求めるつもりはないぞ。…これは『契約』ではないからな。ただの…私の気まぐれさ…」
 少し楽しげに聞こえる声音に、私は確かめるように聞く。
「本当…?」
「本当さ。…信じろ…と言っても人間は信じる事が出来ないのだろうがな…」
「……」
 しばらく考えた。そして、私は答えた。
「分かった…信じる。私の名前は侑稀よ…」
「私の名はシエラウィークだ。…望みは何だ?言ってみろ」
 そこで、私は困ってしまった。
「でも、そんな事を急に言われてもなあ…」
 そう言うと、シエラウィークは首を傾げて言ってきた。
「思いつかないか?…フフッ…人間は欲深な奴が多いが…やはり珍しい」
 私は考えてもなかなか思い浮かばなかった。それで、どうしようと思っていたが、仕方なくこんな事を言ってみた。
「…う〜ん…じゃあさ、友達に…なってよ!…私みたいな人間って、珍しいんでしょう?」
 すると、彼は少し驚いた顔をした。
「ハハハッ…いいだろう。侑稀は本当に面白い…そんな事を言う人間になど、会った事がない」


「私は信じるよ…だって、その方が面白いじゃない!!」
「まぁ…面白いかもしれないけどさぁ…なんか本当にいたら怖くない?」
「そうかなぁ?私は別に怖くないよ♪」
 その悪魔の姿はそこにあるのだが、本当に皆の目には映らないようだ。自分だけが見えるから…この不思議な眼の力も…あってもいいかもしれない。そう考えると、何だが得した気分になれた…。

.

.

拍手する?

DESTROYZONE -破壊区域- since2004 Copyright © 鴻牙唖狼 All rights reserved.

DESTROYZONE -破壊区域-へ戻る
-DESTROYZONEへ戻る-